進化するしみ治療

しみは皮膚の老化の一種です。40歳を過ぎると『しみひとつない』かたのほうが稀だと思います。治療するかどうかはそのかたの価値観の問題なので、治療しなくても問題はないと思っています。また、いままでは、ある種のしみにたいしてはQスイッチルビーレーザーが非常に有効な例もありますが、レーザ−の効かないしみも多かったのが現実です。そのため、健康食品や民間療法はじめ、全く根拠のないものに多額のお金を使って、結局は諦めてしまう方が大半でした。また、かぶれなどをおこして私達皮膚科を訪れるかたも多くありました。
また、Qスイッチレーザ−はしみ治療の奇跡だと思います。皮膚を傷つけることなく、しみやあざを取り去ることができます。ただ、レーザー照射後に炎症後の色素沈着を起こしてしまうことがよくあります。これは時間がたてばそのうち取れますが、せっかくしみ治療をしたのに、前よりもしみが濃くなっては、それが短期間であっても、患者さんにとっては納得がいかないことです。
Qスイッチルビーレーザ−で取れないようなしみ治療を可能にしたのがトレチノイン療法です。簡単にいうと表皮性のしみ(メラニン)はトレチノインで落とし、真皮性のしみ(病的メラノサイト)はレーザーで取り去るということです。両方のしみのある場合は表皮性のしみをトレチノインで落としてから、真皮のしみをレーザーで破壊するとということです。
どちらを使うか、あるいはどちらを先に使うかはしみの種類によって違います。最近は低出力のレーザーやIPLが流行です(当院でも低出力Qスイッチヤグレーザ−を設置しております)が、確実にしみをとるために、理論的な裏付けのあるのはトレチノインとQスイッチルビーレーザー治療です。この2つを適切に使うことによって、しみ治療が格段の進歩をとげました。

(図)吉村先生のホームページより引用

Ia

表皮基底層メラノサイト(正常)のメラニン産生能の亢進、基底層のメラニン産生が主体のもの

老人性色素斑 肝斑 偏平母班 そばかす 炎症後色素沈着

いままで治療がむずかしいといわれていたり、レーザー治療後にいわゆるレーザー焼が起りやすいとされていたものですが、トレチノインで非常に良い結果が得られています。偏平母班は治療の難しいあざですが、子供の顔でファーストチョイスとしてやってみる価値があると思います。なぜなら、色素脱出や瘢痕を起こすことがないからです。

Ib

Iaに角質の肥厚を伴ったもの

老人性角化症 脂漏性角化症

角化の著しいものは、まず、Qスイッチルビーレーザーをおこなってからトレチノインを行います。範囲が広く、部分的に角化している範囲が狭い場合はトレチノインを行ってから出来るだけ狭い範囲にトレチノインを行なったり、液体窒素による冷凍凝固療法を併用することもあります。

II

基底層のメラニン産生能の亢進は認めないが、基底層や真皮にメラニンの沈着を認める。

摩擦黒皮症 リール黒皮症 アトピー性皮膚炎の炎症後色素沈着

長期に渡る炎症による色素沈着で、表皮性のメラニンをトレチノインで落としてから、真皮性のメラニンをQスイッチルビーレーザーで処理する。このとき、炎症が充分にとれていることの確認が重要です。

III

基底層のメラニン産生の亢進と、基底層と真皮のメラニン沈着

真皮性肝斑 老人性色素斑に真皮性メラニンを伴ったもの

表皮性のメラニンをトレチノインで落としてから、真皮性のメラニンをQスイッチルビーレーザーで処理する。

IV

基底層のメラニン産生の亢進と基底層メラニン沈着、真皮内メラノサイトーシス

後天性真皮メラノサイトーシス

表皮性のメラニンをトレチノインで落としてから、真皮性のメラニンをQスイッチルビーレーザーで処理すると、炎症後の色素沈着をおこすことなく、効率よく治療が進みます。組織的には太田母斑と略同じですが、見た目は肝斑やそばかすとよく似ているため間違われやすい。トレチノインで前処置しても見た目には殆ど変化がないので、確かな診断と理論的にきちんと理解することが大事です。

V

真皮内メラノサイトーシス

太田母斑

Qスイッチルビーレーザーが治療の主体になりますが、1〜2回の照射後に炎症後色素沈着がおこって以前よりも濃くなったような印象をうけることが知られています。レーザー照射前にトレチノイン療法を行うとレーザーの効率が増す。

トレチノインは御自分で毎日トレチノイン他をつける治療法ですが、その時に幾つかのポイントがあります。トレチノインによる皮膚の良い『剥け』なのか『かぶれ』なのかを区別することが最も大切です。そのためには最低2週間に一度の来院が必要です。
吉村先生のホームページも御覧下さい