悪性腫瘍
皮膚の異常は内臓と違って目で見てわかりますので、皮膚がんは早期に自分で発見できる可能性が高いといえます。強烈な太陽光線(紫外線)を浴びすぎたり、放射線の大量被曝(ひばく)が皮膚がんを引きおこすことはよく知られています。何十年も前に跡を残して治ったやけどや外傷の瘢痕(はんこん:きずあと)、長期間にわたる感染症の反復(同じ場所におできができたり治ったりを繰り返すこと)から皮膚がんが発生したり、ほくろや湿疹だと思っていたものが実はがんである場合もあります。新しく皮膚にできたものや、今まであったものが急速に変化してきた時には、針で刺したり、カミソリで削るなどの刺激を与えたり、自己流で治療しようとしたりせずに、早めに皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。 診断は御自分ではなかなか困難です。あくまで、一般論ですが、色調がまだら、急に大きくなっている、境界線が乱れている、まん中がじくじくしてきたなどがあったら、診察を受けましょう。専門医がみて怪しいときには組織を採って組織検査を行います。一口に悪性といっても程度は様々です。できた場所によっても治療法は異なります。ひとりで悩むより、診察を受けて下さい。全く、違う病気のことも多いです。
 
ボーエン病  Bowen`s Disease  表皮内有棘細胞症 SCC in situ

原因不明のことが多いですが、外陰部にはヒト乳頭腫ウイルスが、露光部では紫外線が関与している可能性があります。多発する場合は慢性ヒ素中毒(鉱山、井戸水、農薬、アジア丸などのかつて使われた医薬品)が考えられます。皮膚の前癌状態です。

基底細胞癌/基底細胞上皮腫   Basaliom/basal cell epithelioma

中年以上顔面に多く、特に眼囲や鼻、耳の周囲に好発する。通常黒色ですが、まれに皮膚色のものもあります。転移をすることは少ないが、深部の骨にまで侵入することがある。

有棘細胞癌 squamous cell carcinoma

熱傷・外傷の瘢痕や老人性角化腫・ボーエン病などの前癌状態から発生したりします。発生部位は、頭部・顔面・四肢に多く、潰瘍を作ったりビラン(皮膚がなく肉が見えること)・壊死(組織が死で汚く見えること)になったり隆起した肉芽腫様になったり見た目は、種々なのでおかしいと思ったら皮膚科医に相談しましょう。

乳房外ページェット病 extramammary Paget's disease 

多くは陰部や股、腋にすこし赤い皮疹が出来る。長引く時には、(皮膚の一部を取り病理組検査)が必用です。一部に糜爛や痂皮をともなうこともある。腋と外陰部に併発した例もあるので、内因的なものの関与が有るのかも知れない。

悪性黒色腫 (メラノーマ) malignant melanoma

メラノサイトからでる皮膚の腫瘍の中で、悪性で進行が早く致命的になることが多い腫瘍です。「ほくろ」をいじったり、紫外線など外的刺激で発生が促進されると言われていますが・・発生率は、かなり低く5万人に1人位と言われています。日本人は、足底からの発生が多いとされています。黒色の腫瘍と思われがちですが、色素を持たない白色のものもありますし、黒色に白色が混じっていることもあります。潰瘍・出血を伴うこともあります。心配な人は専門家に相談しましょう。

悪性血管内被皮細胞腫 malignant hemangioendthelioma

皮膚の腫瘍の中で、最悪で進行が最も早く致命的になることが多い腫瘍です。老人の頭部に多くは出来、まれに、顔面もある。出血性の血管性の悪性腫瘍ですが、頻度は大変まれです。悪性黒色腫に比較しても進行が早いので早期の対処が重要です。

成人性T細胞白血病 ATL

成人T細胞白血病リンパ腫は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I:HTLV-I)の感染により引きおこされることが明らかになっています。HTLV-Iに感染している人は、日本全国で約120万人(人口の約1%)と推定されており、九州、沖縄など南西日本に多いことが知られています。成人T細胞白血病リンパ腫を発症するのは、HTLV-I感染者10,000人について年間6人あまりで、大部分の方はHTLV-Iに感染していても成人T細胞白血病リンパ腫を発症しないことになります。なぜHTLV-Iに感染している人が成人T細胞白血病リンパ腫を発症するのか、なぜHTLV-Iに感染している人でも成人T細胞白血病リンパ腫を発症する場合としない場合があるのかについては研究が進められていますが、まだ十分に解明されていません。
HTLV-Iの感染の経路は、1)母児間の母乳を介しての感染、2)夫婦間の(特に夫から妻への)性交渉での感染、3)輸血による感染の3つがあります。
母児間の感染は、母親がHTLV-Iに感染している場合、子供の20〜30%に感染がおこっており、母乳の中に含まれるHTLV-Iに感染したリンパ球が、その主な原因だと考えられています。母親がHTLV-Iに感染している場合、授乳を中止することにより子供への感染をほぼ防止できることが確かめられています。
夫婦間感染では、主に夫から妻へ、精液中のHTLV-Iに感染したリンパ球を介して感染すると推定されています。しかし、夫婦間感染によってHTLV-Iに感染した場合は、成人T細胞白血病リンパ腫を発症することは極めてまれであるため、今のところ夫婦間感染に対する特別な対策は立てられていません。というのは潜伏期が30年以上あるので、成人が感染しても発症するのは非常にまれと思われます。
輸血による感染は、1986年から全国の血液センタ−で献血時にHTLV-I抗体のチェックがなされており、現在輸血による感染の心配はありません。
このようにHTLV-Iの感染経路は限定されているので、日常生活で感染することはなく、成人T細胞白血病リンパ腫の方やHTLV-Iのキャリアが、隔離されたり生活の制限を受ける必要は全くありません。
成人T細胞白血病リンパ腫は、ほとんどが40歳以上の方で、60〜70歳に最も多く発症します。
症状は皮膚か赤くなったり、時には腫瘤ができたりします。頸部、わきの下、足のつけ根などのリンパ節がはれます。また、肝臓や脾臓がはれることもあります。細菌やウイルスに対する抵抗力が低下して、肺炎などの感染症をおこして熱が出ることがあります。骨髄に拡がった場合には、正常な赤血球や血小板が造られなくなります。このため動悸、息切れなどの貧血の症状や、鼻血、歯肉出血などの出血症状がみられることがありますが、他の白血病と違ってあまり多くありません。
また、血液中のカルシウム値の上昇もよくみられます。これは悪性化したリンパ球がカルシウム値を上昇させる物質を産生するためにおこります。血液中のカルシウム値が高くなると、食欲が低下したり、吐き気やのどの乾きを感じたり、呼びかけに対して反応が鈍くなったり、意識を失ったりするなどの症状がみられます。その他、悪性化したリンパ球は中枢神経と呼ばれる脊髄や脳にも浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)することがあり、頭痛や吐き気が認められることがあります。
血液検査では、HTLV-Iに感染して抗体があるかどうかも調べます。リンパ節がはれている場合には、リンパ節生検が行われます。これは局所麻酔による小切開でリンパ節をとり出し、顕微鏡で悪性細胞の有無を調べる検査です。最終的に成人T細胞白血病リンパ腫の診断を確定するためには、血液やリンパ節の悪性細胞の中に入り込んだウイルス遺伝子の検査を行う場合があります。
成人T細胞白血病リンパ腫と診断された後、病気の拡がりを調べるために全身の検査が行われます。目に見えない腹部や骨盤部のリンパ節がはれてないか、肝臓や脾臓に浸潤していないかを調べるために腹部CTや腹部超音波検査を行います。胃や十二指腸に浸潤していないかどうかをみるためには、胃X線検査や内視鏡検査が必要です。また、縦隔(じゅうかく:左の肺と右の肺の間の胸の正中部分のこと)の周りのリンパ節のはれや、肺へ病気がおよんでいないかどうかを調べるため胸部X線検査や胸部CTが行われます。骨髄に浸潤していないかどうか調べるために骨髄穿刺も行われます。骨髄穿刺は、局所麻酔後、胸骨または腸骨(腰の骨)に細い針を刺して骨髄液を吸引し、顕微鏡で観察します。その他、中枢神経(脳や脊髄)への浸潤を調べるために、局所麻酔後に腰の部分の背骨の間から針を刺して少量の脳脊髄液を採取する場合があります。
最近はしみ治療で紹介したトレチノインの一種が有効です。


血液中のHTLV-I抗体が陽性ですが、症状も検査値異常も全く認められない場合をHTLV-Iキャリアと呼びます。本人の希望がある場合を除いて、HTLV-Iキャリアでは、定期的な観察は必要ではありません。 発症を抑制するために抗ウイルス剤を内服するとの説がありますが、エビデンスはありません。

菌状息肉腫

皮膚に発生し、主に皮膚を侵す皮膚悪性リンパ腫の代表的疾患です。T細胞と呼ばれるリンパ球細胞が悪性化し、皮膚に症状が出現してきます。発生原因は明らかではありません。発生の頻度は極めて低くいとされています。
下記の臨床的分類が一般的に使用されています。通常、進行すれば、紅斑期→扁平浸潤期→腫瘤期→内臓浸潤期の順に進行します。

I.紅斑期
初期症状は皮膚の発疹です。一般的に紅斑と呼ばれる発疹の形態は多彩であり、一見して診断することは困難です。
1. 大きさや形態がさまざま
2. 皮膚に萎縮や乾燥を伴うことがある
3. 色調が鮮紅色〜暗紫色〜暗褐色などさまざま
4. 身体や手足の中枢側(身体の中心に近い側)に出現することが多い
5. 成人期に発症して緩徐に進行する
これらの紅斑は、湿疹や乾癬(かんせん)などと呼ばれる皮膚病として治療されていることもしばしばあります。が、かゆみはほとんど無いのが特徴です。紅斑がいくつか出現し、徐々に増えていきます。この時期を紅斑期と呼び、この期間は通常数年〜十数年におよびます。
★pityliasis lichenoides chronica は本症の前駆症状といわれていますが、最近は関係ないという説が有効です。が、一応、組織検査をすることをお勧めします。

II.扁平浸潤期
紅斑部の皮膚が厚みを増したようにややかたく触れるようになった段階を呼びます。紅斑部の発赤もさらに増強してきますが、紅斑期の発疹が混在することもあります。この時期は通常数年〜10年前後におよびます。

III.腫瘤期
発疹のある皮膚が隆起してきて、しこり(腫瘤:しゅりゅう)が出現してきたり、皮膚がただれ出血を伴ったり(びらん)、潰瘍(かいよう)が出現してきます。この時期を腫瘤期と呼び、病気がかなり進行してきた段階を示しています。この時期は通常数ヶ月〜数年です。

IV.内臓浸潤期
がん細胞が内臓器官に拡がった段階を呼びます。予後は極めて不良で、通常数ヶ月です。



治療

癌の種類と病基によって、治療法は様々です。怪しいものは切除して組織検査をするのが懸命です。