アトピービジネス
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎とは、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持っています。
アトピー性皮膚炎は、「アトピー素因」+「環境的要因」によって発症します。が、そのことは高血圧、糖尿病はじめ、多くの疾患が「体質」+「環境因子」であるということを思えば、何ら特異なことではない。日本人のアトピー性皮膚炎の発生頻度は約10%と報告され、アトピックスキンといわれる乾燥肌までいれれば、実際にはもっと多いとされています。
このようにアトピー性皮膚炎は、社会に広汎に見かけることができる極めて一般的な病気です。それだけに、アトピー性皮膚炎に罹患している患者は莫大な数にのぼります。
アトピー性皮膚炎の有病率は、乳児は29%、幼児は1515%、学童は8%、大学生は2%と、年齢と共に減少し、老齢期においてはほとんど発生することはありません。
このように、アトピー性皮膚炎の80%以上は10歳以上になると自然治癒します。
自然治癒しても、遺伝的であるアトピー素因は滅失するわけではないので、20歳以上になっても、何らかの環境的な要因でアトピー性皮膚炎が発症することがあります。 
1 厚生省のガイドライン
  アトピー性皮膚炎による病態の中心は、皮膚における炎症です。
  その炎症は通常放置しておいても沈静化せず、逆に、掻破、皮膚のバリアー破壊による刺激の増加により、悪循環の経過をたどります。
  そこで、皮膚の炎症をコントロールする手段としてステロイド外用薬を使用する治療方法が医学界ではコンセンサスを得ています。
  厚生省の「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」においてもステロイド外用薬の使用を薬物療法の基本例に挙げています。2 アトピー性皮膚炎に対する安全・確実な治療法
  アトピーになりやすい体質(アトピー素因)自体を変える方法は、医学的に確立されていません。
  ですから、アトピー性皮膚炎に対する安全・確実な治療法は、皮膚の炎症のコントロールや、刺激の原因を除去するなどして、環境的な要因を除去することにあります。
  従って、医学的治療にって「うまれつき皮膚がデリケートで湿疹ができやすい体質(アトピー素因)」自体を変えることはできませんが、ステロイド外用薬の使用によって、湿疹を引き起こすきっかけとなることを避け、軽いうちに治療をするなどして症状を悪化させないことが重要です。
 そのように症状をコントロールしたうえで、環境的な要因を除去することにより、アトピー性皮膚炎を治療するのが安全・確実な治療方法だと言えるでしょう。
アトピービジネス
アトピー性皮膚炎で悩んでいる人はずいぶん多いため、多くの患者さんや患者さんでないひとにまで、アトピーというイメージが膨れ上がっています。そのなかで、アトピー性皮膚炎は、QOL(生活の質)を非常に悪化させるが、死亡するほどではない、伝染しないなど、戦後急速に増加したいわゆる文明病であることなど、アトピー性皮膚炎に選民意識ならぬ、選病意識を持っているのでは無いかとさえ思わせるような現実に一度ならず遭遇しました。難治性の皮膚病を持っているひとのなかには、アトピーといえばそれ以上詮索されないので、アトピーではないのにアトピーを名乗る自称アトピーを責めることはできないでしょう。加えて、命を落とすような致命的な病気ではない、自然治癒もありえることなどが、気の性格から、民間療法の市場として大きな魅力があり、アトピー性皮膚炎を利用しようとする業者を多く産む結果となってしまったのでは無いかと考えます。
加えて、多くの患者さんがスタンダード治療をする皮膚科医に背を向け、そのような療法に走ったのには、ステロイドを悪者にして、ステロイドを使う医師を悪徳医師とし、皮膚科医と患者さんを引き離すという作戦にはまってしまった結果ですが、そのような、皮膚科医不信を招いてしまった原因は、私達皮膚科医が患者さんの悩みをわかり、疑問に答えていない結果であるということを真摯に受け止めなければいけないと考えます。
アトピービジネスの共通点
何十万円もする掃除機、健康保険の利かない薬や入浴剤、さまざまな健康食品、その商品を使えば、アトピー性皮膚炎が、根治するかのような印象を与えるマスメディアを利用したプロパガンダ。また、必ず、ステロイドを、悪者として攻撃し、自分達の商品が副作用のなく体質までも改善するかの如くうたっている。ステロイドを怖がらせる戦略は、大成功しています。ビジネスなので、保険がきかず、高価が、注意ポイントです。保険のきかない高額な治療ものにもよいものもあるのでその見極めは大変むずかしと思います。
巧みなスト−リ−の展開
アトピー性皮膚炎の患者の心をとらえる巧みなスト−リ−の展開を行っているが、それは同一のパタ−ンである。
  1. 難病で一生治らない=希望をなくさせる。
  2. ステロイドの外用薬を使うから良くならない=不安をあおる
  3. 特殊療法による「奇跡」を示す=解決法の提示
  4. 「奇跡」に対する対価を示す=セ−ルス、の順である。 
  5. 悪化した場合には好天反応ということばを使い、悪い物が出ている証拠とする。
このような、ストーリーが患者の心をつかむ背景には、病因が未解決であること、西洋医学に対する不信感や東洋医学への憧れ、皮膚科による脱ステロイド療法の提唱、副作用などに対するマスコミの過剰報道がある。
そこに、巧妙な販売戦略で売り込みを図っているという図式が成立する。その販売戦略の特徴は、
  1. 慈善事業のように装い、企業としての性格を表に出さない、
  2. ○○友の会などの公的な団体を思わせる名称で宣伝する、
  3. 未認可の医薬品を販売したことにならないように、カウンセリング料、会費などの名目で費用を徴収する、
  4. 商品そのものがアトピー性皮膚炎に効くという形で宣伝できないため、『脅威の○○療法』などのタイトルの本を出版し、この本の広告をする、
  5. 民間療法をニュースとしてマスコミに乘せる、などをあげることができる。
アトピービジネスの主な分類とその内容

既存の医療と共存がの可能性なもの    妨ダニ布団、低刺激性石鹸化粧品
既存の医療と共存がの不可能性なもの
 医師の治療を受けずにこの療法を進めれば治るとするもの
   温泉療法の会社、エステテックサロン、健康食品、自然食品、特殊なクリームなど、
医療機関により非保険診療として実践されている不適切治療
   活性酸素除去物質含有軟膏による治療、SOD食品、ソフトーザー療法、超酸性水療法、漢方薬、特殊な化粧品等による治療。外用だけでなく、内服ステロイド薬が併用されていると推測できる例も多数ある。
医療機関がアトピービジネスの会社により経営されているもの
   化粧品会社などにより実質的に医院が経営され、治療のもとに化粧水が販売されたり、カウンセラーによって健康食品などの商品購入の勧誘が行われる。
皮膚科医が実践しマスコミが媒介してブームになったものの、効果は不明
   酸性水によるステロイド離脱療法、シジューム茶による治療など。マスコミを通じ「驚異の○○療法」といったキャッチフレーズのもとに宣伝される。

これらはもちろん只ビジネスを目的としたものも多いが、善意でありながら、無知や不勉強で結果的に不適切医療を実践する結果になってしまっているものもある。
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療問題委員会
(委員長・竹原和彦金沢大学教授)
アトピービジネス被害110番